top of page

なぜ「あの場面」で特定のブランドを思い出すのか

  • 2 日前
  • 読了時間: 6分


オケージョン認知から始まるオケージョンブランディング

コンビニで飲み物を買おうとしたとき、仕事帰りの疲れた夜にふと飲みたくなるお酒を選ぶとき、あるいは休日に家族と出かける計画を立てるとき。

私たちは何かを買おうとする瞬間、無意識のうちに特定のブランドを思い浮かべている。

マーケティングの世界では、この「ある状況になったときに真っ先に思い出されるブランドになること」をオケージョンブランディングと呼ぶ。

近年のマーケティング研究では、ブランドが成長するためには「好きになってもらう」こと以上に、「必要になった瞬間に思い出してもらう」ことが重要だと考えられている。

その鍵を握るのが、近年注目されているオケージョン認知という考え方である。


オケージョンブランディングとは何か

例えば、

  • 朝の眠気覚ましならコーヒー

  • 飲み会ならビール

  • 夏の暑い日ならスポーツドリンク

といったように、人は商品カテゴリーを思い浮かべるきっかけとなる「場面」や「状況」を持っている。

マーケティングサイエンスでは、このようなきっかけを**CEP(カテゴリー・エントリー・ポイント)**と呼ぶ。

つまりオケージョンブランディングとは、

「その状況になったら、まず自社ブランドを思い出してもらう」

ための活動と言える。

例えば、

  • 「仕事帰りの一杯」といえば黒霧島

  • 「休日の家族ドライブ」といえば特定の自動車ブランド

  • 「朝の通勤前」といえばあるコーヒーブランド

という状態を作ることが理想である。


オケージョン認知とは何か

一方、オケージョン認知とは、

「広告を見たときの状況や場面と一緒に広告を覚えている状態」

を指す。

例えば、

  • 山手線の車内で見た広告

  • 雨の日の帰宅途中に見た広告

  • 金曜日の夜に見た広告

などである。

広告の内容だけでなく、

「どこで」「いつ」「どんな気分で」

見たのかまで記憶に残っている状態がオケージョン認知である。


なぜオケージョン認知が重要なのか

人間の記憶には、「エピソード記憶」という仕組みがある。

これは単なる知識ではなく、

  • いつ

  • どこで

  • 誰と

  • どんな気持ちで

経験したかをセットで覚える記憶である。

例えば、

「雨の日に駅で見た温かい缶コーヒーの広告」

を覚えている人は、

後日、同じような雨の日に駅に立ったとき、その広告を思い出しやすくなる。

そして広告と一緒に記憶されていたブランドも自然と想起される。

つまり、

広告接触時の状況記憶が、後日の購買場面でブランドを思い出す引き金になる

のである。


オケージョン認知を構成する7つの要素

jeki(ジェイアール東日本企画)の研究では、広告を記憶する際の状況を構成する要素として次の7項目が整理されている。

① 気分や体調

  • 疲れていた

  • お腹が空いていた

  • 喉が渇いていた

② 場所

  • 電車内

  • オフィス

  • 自宅

③ 時間帯

④ 曜日

  • 月曜日

  • 金曜日

  • 休日

⑤ 天候

  • 晴れ

  • 暑い日

  • 寒い日

⑥ 一緒にいた人

  • 一人

  • 家族

  • 友人

  • 同僚

⑦ していたこと

  • スマホを見ていた

  • 通勤していた

  • 買い物していた

これらが重なることで広告は強く記憶される。


実際に効果はあるのか

jekiが実施した茶系飲料の調査では、

広告を見たときの状況まで思い出せる人は、

思い出せない人に比べて、

  • 購入意向

  • 検索意向

  • 推奨意向

が大きく高まることが確認された。

特に購入意向は約1.8倍に達した。

つまり、

広告を見たことを覚えているだけではなく、

どんな場面で見たかまで覚えていることが行動につながる

のである。


オケージョン認知を高める4つの方法

オケージョン認知は偶然生まれるものではない。

広告設計によって意図的に高めることができる。


① オケージョンを描くクリエイティブ

商品の説明だけではなく、

「その商品が必要になる瞬間」

を描くことが重要である。

例えば焼酎なら、

「仕事終わりの解放感」

を表現する。

化粧品なら、

「朝、鏡を見たときの悩み」

を表現する。

商品ではなく状況から入ることで記憶に残りやすくなる。


② オケージョンを連想しやすい媒体を選ぶ

交通広告や屋外広告(OOH)は特に有効である。

なぜなら、

広告を見る場所そのものが強い文脈になるからだ。

テレビCMは自宅で見ることが多いが、

駅や電車内の広告は

「通勤中」「移動中」

という状況と強く結び付く。

そのためオケージョン認知が発生しやすい。


③ 接触時間帯を設計する

人の気分や欲求は時間帯によって変わる。

例えば、

  • 朝は覚醒ニーズ

  • 昼はエネルギー補給ニーズ

  • 夜は癒やしニーズ

が高まりやすい。

その時間帯に合わせて広告を出すことで記憶への定着が高まる。


④ 生活動線で考える

広告は点ではなく線で設計することが重要である。

例えば、

自宅↓駅↓電車↓コンビニ

という動線上で広告を連続的に接触させる。

そうすることで、商品購入直前までブランド想起を維持できる。


交通広告とスマホ広告の組み合わせが強い理由

近年は交通広告とスマートフォン広告を組み合わせるクロスメディア施策が注目されている。

例えば、

電車で広告を見る↓気になって検索する↓スマホ広告で再接触する↓店舗で購入する

という流れである。

jekiとファミリーマートの実証実験では、

電車広告と店頭サイネージ、スマホ通知を組み合わせた場合、

商品購入率が非接触者の約1.7倍になった。

オケージョン認知によって生まれた記憶が、購入直前に再活性化された結果と考えられる。


ブランドの規模によって戦い方は違う

すべてのブランドが同じ戦略を取ればよいわけではない。


大手ブランド

大手ブランドは多くの人に知られている。

そのため、

「どれだけ多くの場面で思い出されるか」

が重要になる。

幅広いCEPを押さえることが課題である。


地方ブランド・新規ブランド

一方で知名度の低いブランドは、

まず特定の場面で強く思い出されることが重要である。

例えば、

  • お土産ならこのブランド

  • 父の日ギフトならこのブランド

というように、狭いオケージョンで圧倒的な想起を獲得する。

その後、日常利用へ広げていく方が成功しやすい。


まとめ

オケージョンブランディングとは、

「商品が必要になった瞬間に最初に思い出されるブランドになること」

である。

そしてその実現手段として有効なのがオケージョン認知である。

広告を見たときの

  • 場所

  • 時間

  • 気分

  • 行動

などの状況とブランドを結び付けて記憶してもらうことで、後日同じような状況になった際にブランドが自然と想起される。

つまり、

オケージョン認知は「広告の記憶」をつくる技術であり、オケージョンブランディングは「購買時の想起」をつくる技術である。

そして前者が後者を生み出す。

クリエイティブ、媒体選定、時間帯設計、生活動線設計を一体的に考えてオケージョン認知を高めることが、生活者の頭の中で「その場面ならこのブランド」というポジションを獲得する最も有効な方法だと考えられる。


コメント

5つ星のうち0と評価されています。
まだ評価がありません

評価を追加
bottom of page