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UMIOSへの社名変更は成功できるか

  • 7月2日
  • 読了時間: 6分




マルハニチロという水産加工の老舗企業が合併して発足したコーポレートブランドは、冷凍食品を中心に消費者が認知し、定着していた。

確かに、合併後の一時的な名称という印象はあったが、今回のいきなりのブランド名変更はリスクを伴う。

商品自体に消費者がベネフィットを感じる要素が少ないとすれば、結局は価格訴求の商品になりかねない。

この戦略が抱えるリスクと、それを乗り越えるためのオケージョンブランディングについてレポートする。


1. UMIOS移行に伴うリスク

消費者が購買行動を起こす際、特に食品分野においては「安心感」や「見慣れていること(純粋想起・助長想起)」が強力なフックになる。

  • 「マルハニチロ」ブランドの資産(エクイティ)ロス

    マルハニチロという名前に「強い先進性」はなかったとしても、長年培った「大手食品メーカーとしての安心感・信頼感」は確実に存在していた。これを前面から引く、あるいは薄めることは、店頭での棚の確保(定番落ちリスク)や、消費者が「どこの馬の骨かわからないブランド」として敬遠するリスクを生む。

  • 「オケージョン」との結びつきの弱さ

    消費者が日常の買い物のなかで「ウミオス」という言葉を思い出すシーン(オケージョン)が確立されていない。「冷凍食品ならマルハニチロ」という緩やかな結びつきすら絶たれてしまうと、想起のフックを完全に失うことになる。


2. なぜ、あえて新名称・新ブランドを打ち出すのか?(企業側の意図)

一方で、企業がこのようなリスクを取る背景に「既存の『マルハニチロ=水産・缶詰・冷凍食品』という古いイメージからの脱却(リブランディング)」という強い意志がある。

  • ドメインの再定義(海の恵みを起点とした新価値創造)

    単なる「魚の加工会社」ではなく、サステナビリティや健康、バイオテクノロジーなど、より広い価値(ウェルビーイングやエシカル消費)を提供する企業へとシフトするための旗印として「UMIOS」を定義していると考えられる。

  • 次の世代(タイパ・コスパ・エシカル重視層)の開拓 「マルハニチロ」という名前に昭和・平成のドメスティックなイメージを強く持つ層とは異なる、タイパ(タイムパフォーマンス)や環境価値を重視する若年層やグローバル市場に対して、ゼロベースで新しいブランド認知を築く狙いがある。



オケージョンブランディングの必要性


UMIOSのように、企業名やプロダクト自体のブランド力がまだ弱い、あるいは生活者との情緒的つながりが薄い初期フェーズにおいて、「オケージョンブランディング(生活者がその商品・サービスを必要とする『シーンや文脈』と結びつけて認知を築くアプローチ)」は極めて有効、かつ不可欠な戦略となる。

ブランド名そのものの有名さ(純粋想起)で勝負できない場合でも、「〇〇なとき、〇〇なシーン」という生活者側の文脈(オケージョン)を起点にすれば、ピンポイントで強力な選択肢(NO.1)として想起される打率が跳ね上がるからである。


1. なぜオケージョンブランディングが有効なのか?

従来の「認知」を競うブランディングは、莫大な広告費を投入して「名前を覚えてもらう」戦いだった。しかし、メディアが細分化された現代において、認知度の低いブランドがこれをやるのは非効率となる。

  • 「名前」ではなく「出番」を認知させる

    生活者は「マルハニチロ(あるいはUMIOS)」というブランド名を探して生きているわけではない。「忙しい朝に、手軽に栄養を摂りたい」「夜、少し贅沢に家飲みをしたい」という課題(オケージョン)に直面した時に初めて、それを解決する手段を探す。

  • 競合の「土俵」をずらせる

    「冷凍食品」というマクロなカテゴリーで戦うと、既存の大手や価格競争に巻き込まれるが、「平日、親が遅くなるときの『子どもが一人で安心して食べられる満足夕食』」というオケージョンに特化すれば、競合がガラリと変わり、独自のポジション(カテゴリーの代表)を奪うことが可能となる。


2. オケージョンブランディングを成功させる4つの手段

オケージョンブランディングを具体的に推進し、売上に直結させるためには、以下のステップと手段の連動が必要。


① オケージョンの「棚卸し」と「特定(セグメンテーション)」

生活者のライフスタイルを観察し、自社の商品が最も力を発揮する、あるいは競合がまだ独自のポジションを築いていない「隙間(ホワイトスペース)」となるオケージョンを特定。

  • 時間軸・場所・心理状態の掛け合わせ

    単に「朝食」ではなく、「平日の朝、家族を送り出した後、自分のためだけに使う静かな15分」のように、シーンをナラティブ(物語的)に具体化する。


② メッセージの「主客逆転」(ブランド都合から生活者文脈へ)

コミュニケーションの主語を「私たちはこういう商品を開発しました」から、「あなたが〇〇なとき、これがお役に立ちます」へ完全にシフトする。

  • ダメな例:「海の恵みを凝縮した、UMIOSの新しい機能性フィッシュバー」

  • オケージョン型の例:「デスクワークが続いて、夕方もう一踏ん張りしたいときの『ギルトフリー(罪悪感ゼロ)な夕方おやつ』」


③ メディアミックスによる「オケージョン誘発型」の接点配置

生活者がそのオケージョン(シーン)に直結するタイミングや場所を捉えて、ピンポイントでアプローチする。

  • 文脈に合わせたデジタル・音声メディアの活用

    夕方の買い物や、料理中のシチュエーションに親和性の高いメディア(特定の生活時間帯を狙った音声広告や、レシピ検索アプリ、SNSのタイムライン)を活用し、「今、まさにその気分」になっている瞬間にメッセージを届ける。

  • コンテンツマーケティングとの連動

    商品の機能説明ではなく、「〇〇な日の過ごし方」「〇〇なときのおすすめメニュー」といった、生活シーンそのものを提案するコンテンツを発信し、その解決策として自然にブランドを位置づける。


④ 流通・店頭(ラストワンマイル)における「シーンの具現化」

広告でオケージョンを訴求しても、スーパーの売り場で「魚の棚」「冷凍食品の棚」に並べられてしまっては、従来の「ブランド力勝負」「価格勝負」に引き戻される。

  • 売り場を「カテゴリー」から「オケージョン」へ変える

    流通(バイヤー)を巻き込み、「お弁当コーナー」「おつまみコーナー」といった、生活者の目的(オケージョン)に応じた棚割りやクロスMD(関連販売)を仕掛ける。

  • 店頭POPでの文脈再現

    「新発売!UMIOSの○○」ではなく、「金曜日の夜、一週間頑張った自分を労う『プチご褒美ワイン』の相棒に」といった、利用シーンが瞬時に脳内に浮かぶクリエイティブを店頭のラストワンマイルで徹底する。


商品ブランド力が弱く、新名称の認知が低い「UMIOS」のようなケースにおいて、ただ名前を連呼する広告はコストの無駄遣いとなる可能性が高い。

有効となるのは、「生活者が UMIOSの商品を手に取るべき言い訳となるシーン」を企業側から先回りして定義し、そのオケージョンが訪れた瞬間にパッと想起される状態(オケージョンブランディング)を作ることである。

生活者の日常の行動導線(時間、空間、心理)に、どれだけ自然にブランドの「出番」を差し込めるかが、売上低下を防ぎ、新たなファンを獲得する最大の武器となる。


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